叡王戦 第五局 9七桂の破壊力 = 超初心者解説 = [勉強・遊び]
2021-09-16 No.5228(So-net 2940+2288) 2020年Blog WebDiary Since 2002
藤井聡太三冠、1分将棋の局地で生んだ絶妙手「▲9七桂」
解説棋士も「普通の人が見る世界と違う」ABEMA TIMES
これから先日行われた叡王戦第五局の9七桂について
素人の僕が将棋を知らない人に向けて書いてみたいと思います。(笑)
これが数日前にお昼のワイドショーでも取り上げられた▲9七桂です。
手前が先手の藤井王位棋聖の103手目、8九桂を9七桂としたところです。
まずは、なぜここまで▲9七桂が話題になったかです。
画像が荒くて見づらいのですが、見て頂きたいのは
上のバナーのパーセンテージと右の候補手とその下のグラフです。
まずバナーは▲9七桂を打つ前は藤井2冠が82%で優勢を表してます。
グラフでも徐々に藤井2冠が右肩上がりになっています。
そして、AIの候補手には▲5五角が第一候補で(5五角は後で図にします)
この時点では▲9七桂はどこにも表示されていなかったのです。
ところが! 藤井2冠が▲9七桂と打った瞬間
AIは55%と藤井2冠の優勢を取り消して互角としたのです。
藤井2冠の▲9七桂に対して、
豊島将之叡王(とよしま まさゆき えいおう)が104手、△3六歩と打つと
藤井2冠の優勢が82%から92%と戻ったどころか
▲9七桂、△3六歩で一気に勝負が決した事を表したのです。
それほど、藤井2冠の▲9七桂は将棋のプロをうならせた
AIさえも惑わせた、歴史に残る一手だったのです。
これは豊島叡王が111手目で投了した場面ですが
右のグラフに互角に落ちてV字になった▲9七桂が見えています。
そしてグラフには藤井2冠が徐々に優勢になっていった事を
右肩上がりに示しています。
そこでまずは9七桂を見る前に、
藤井2冠が右肩上がりに優勢になっていった様子を見てみます。
この図は豊島叡王が2枚の銀を徐々に上げてきたところに
角を上げ下げして2枚銀の攻撃をかわしたところです。
ところが豊島叡王は、ここまで2枚銀を押し上げてきます。
豊島叡王の2枚銀に対して、藤井2冠は銀を下げて防戦してますが
この時点ではまだAIの評価値はほぼ互角でした。
75手目にして、▲5六金と上がったあたりから
豊島叡王の2枚銀は縦に並び攻撃陣としては悪い形になってきました。
ちなみに、▲5六金の金は最終局面で攻撃の駒として
豊島叡王の玉に迫る4三金と上段まで上がっています。
一般的には攻撃には銀と桂、守備には金と言われてるのです。
さあ、いよいよ▲9七桂とはどんな手だったのか?
じつは上のバナーにもう一つ情報が見えています。
豊島叡王1:00==0:40藤井聡太 と見えます。
これはおのおの4時間の持ち時間がなくなり
互いに1分で指さなくてはならない事を示してるのです。
藤井2冠は残り2分を使い切り1分将棋で▲9七桂を指したのです。
▲9七桂を指す前のAIの候補手は▲5五角でした。
これでは豊島叡王の銀2枚と飛車の防御力が強くて
勝負の行方は藤井2冠の▲5五角では分からなかったのです。
ところが1分将棋ということもあって▲9七桂、△3六歩で
このあと10分くらいで豊島叡王が投了してしまいました。
投了まではAbemaで解説してるのでご覧下さい。
さて、ここから▲9七桂がどれほど素晴らしい手だったのか?
どうしてAIが▲9七桂を互角としてしまったのか?を見てみます。
まずはAIが示した後手の最善手、6六歩を見ていきます。
じつは▲9七桂以降、先手が一手でも間違えると、
後手が最善手を指し続けると大逆転の可能性があったのです。
そこで、△6六歩に対して先手がミスをする局面です。
△6六歩は右端の1三に角があり、歩で取ると角筋があいて
これは凡ミスになるので、▲6六同銀と取る一手です。
以下順に並べます。
△8七歩成
▲8七同銀
△7六銀
▲7六同銀
△7八飛車
どうです。これで王手角取り、銀取りで豊島叡王の逆転です。
ところが、△6六歩に対して
▲4六歩が、▲9七桂の弱点を消す素晴らしい手なのです。
△4六同角と▲4六歩を取ると
▲4六同玉と玉で角取りにする手順があり
△4九飛車、▲4八歩で、収まってしまいます。
また他の手順でも、後手の角筋を止める▲4六歩が有効で
△7八飛と王手角取りとされても
▲4七玉に後手が△8八飛と先手の角を取れば
▲4六玉と後手角を取って玉は上に逃げて先手は詰まないのです。
つまり、藤井2冠の▲9七桂は
△6六歩に対して、▲4六歩で勝てると見切ったのです。
それも1分将棋でです!
103手目の▲9七桂に対して投了は111手目です。
▲9七桂から8手で詰んでしまったのです。
なお、▲9七桂から詰むまで17手詰めを藤井2冠は読んでいました。
17手詰めと簡単に言うけど、どれほどの分岐があるか想像を絶します。
くどいようですが、
それも1分将棋でです!
藤井聡太王位・叡王・棋聖3冠の次戦は10月8日(金)の竜王戦からで
またしても豊島将之竜王との七番勝負です!
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